<?xml version="1.0" encoding="utf-8" standalone="yes"?><rss version="2.0" xmlns:atom="http://www.w3.org/2005/Atom" xmlns:content="http://purl.org/rss/1.0/modules/content/"><channel><title>バブル on 玉露の時間</title><link>https://gyokuro.dev/ja/tags/%E3%83%90%E3%83%96%E3%83%AB/</link><description>Recent content in バブル on 玉露の時間</description><image><title>玉露の時間</title><url>https://gyokuro.dev/images/gyokuro-avatar.png</url><link>https://gyokuro.dev/images/gyokuro-avatar.png</link></image><generator>Hugo -- 0.147.9</generator><language>ja</language><lastBuildDate>Sun, 19 Jul 2026 09:00:00 +0900</lastBuildDate><atom:link href="https://gyokuro.dev/ja/tags/%E3%83%90%E3%83%96%E3%83%AB/index.xml" rel="self" type="application/rss+xml"/><item><title>支出は実在する、回収は別物だ：AIインフラ投資をドットコムのダークファイバーで読む</title><link>https://gyokuro.dev/ja/posts/supply-vs-recovery/</link><pubDate>Sun, 19 Jul 2026 09:00:00 +0900</pubDate><guid>https://gyokuro.dev/ja/posts/supply-vs-recovery/</guid><description>&lt;p>2025年1月、中国のDeepSeekが低コストの大規模言語モデルを公開したとき、半導体株は急落した。論理は単純だった。モデルが安く作れるなら、高価なGPUはそれほど要らない。効率が上がれば需要は減る。&lt;/p>
&lt;p>その論理は、これまでのところ外れている。&lt;/p>
&lt;p>推論の単価は2023年以降で9割下がった。だが消費されたトークンは減るどころか爆発した。&lt;a href="https://www.bain.com/insights/how-token-economics-will-change-opex/">ベイン・アンド・カンパニーの試算&lt;/a>では、トークン単価が2024年12月から2025年12月にかけて半減したのに対し、同じ期間の消費トークンは4.5倍に増えた。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは、DeepSeekのモデル公開に際して「ジェヴォンズのパラドックスがまた起きた」と述べている。19世紀の経済学者ウィリアム・スタンリー・ジェヴォンズは、蒸気機関の効率が上がると石炭の消費はむしろ増えることを見出した。安くなった資源は、使われなくなるのではなく、新しい用途を開いて総量を増やす。&lt;/p>
&lt;p>だから「AIは本物か、それともバブルか」という問いは、掛け違っている。需要が本物であることは、もう論点ではない。論点は別のところにある。&lt;/p>
&lt;p>＊&lt;/p>
&lt;p>問うべきは、支出と回収の距離だ。&lt;/p>
&lt;p>いまAIインフラに投じられている金は、紙の期待ではない。台湾積体電路製造（TSMC）は2026年上期だけで268億ドルの設備投資を実行した。三菱重工業のガスタービン事業には2.2兆円の前受金が入っている。日立エナジーの受注残は579億ドル、最長6年をかけて売上になる。使った金、入った金、契約した金である。それぞれの構造は&lt;a href="https://gyokuro.dev/ja/posts/five-year-physics/">別稿で書いた&lt;/a>。&lt;/p>
&lt;p>ここが、2000年のドットコムとの決定的な違いだ。あのときは「収益化は後回し」だった。売上のない会社に値がついた。いまは逆で、金が先に、しかも実際に動いている。&lt;/p>
&lt;p>だが、金が動いていることは、その金が返ってくることを意味しない。支出は実在する。回収は、まだ検証されていない。この二つを混同したところに、25年前の教訓がある。&lt;/p>
&lt;p>＊&lt;/p>
&lt;p>2001年のシスコシステムズを思い出す価値がある。&lt;/p>
&lt;p>2001年4月、シスコは22.5億ドルの在庫評価損を計上した。史上最大規模の評価損の一つで、同社は11年ぶりの赤字に転落し、四半期の純損失は26.9億ドルに達した。米証券取引委員会（SEC）に提出された四半期報告書で、シスコはこの評価損の理由を、予測売上高の急激かつ大幅な減少と説明している。在庫は、製品ごとに12か月の需要を超える水準を基準に算定された。&lt;/p>
&lt;p>なぜそんな在庫を抱えたのか。前年の2000年夏、シスコの注文は溢れていたが、部品不足で組立ラインが停滞していた。同社は供給を増やすことを決め、必要になる何か月も前に部品の購入を確約した。製造委託先には6億ドルを無利子で貸し付け、シスコに代わって部品を先に買わせた。供給が足りなくなることを恐れて、前もってコミットしたのである。&lt;/p>
&lt;p>需要が続くあいだは、それは賢い先手に見えた。だが2001年に需要が急減した瞬間、12か月分を超える在庫は、行き場のない評価損に変わった。多くは特注品で、転売もできなかった。&lt;/p>
&lt;p>シスコの評価損を「二重発注」の物語として語る解説は多い。顧客が供給不足を恐れて複数の相手に同じ注文を出し、見かけの需要が膨らんだ、という筋書きだ。だがSECに提出された一次資料は、そこまで踏み込んでいない。会社が書いているのは、自社の予測が過大だった、ということだけである。教訓は、顧客の二重発注にあるのではない。供給側が、不足への恐怖から、需要を先取りしてコミットしたことにある。&lt;/p>
&lt;p>＊&lt;/p>
&lt;p>同じ資金の流れが、いま起きている。&lt;/p>
&lt;p>顧客が、タービンを受け取る何年も前に金を払う。前受金2.2兆円とは、そういう金だ。TSMCの経営陣は、2026年の決算説明会で、設備投資を増やす理由を二つ挙げた。顧客からの圧力を受けて能力を増強していること、そして装置をインフレ価格で先に買っていること。供給不足への恐怖に駆動された前倒しのコミットという点で、2000年夏のシスコと構造は同じである。&lt;/p>
&lt;p>ただし、一つ大きな違いがある。シスコは在庫を自ら抱える側で、だから評価損を被った。三菱重工や日立エナジーは前受金を受け取る側で、在庫リスクの位置が違う。前もって金を払っているのは、むしろ顧客の側だ。&lt;/p>
&lt;p>とはいえ、受け取る側にリスクがないわけではない。前受金は会計上の債務であり、納入までの数年、その金は運転資本として使われる。需要が消えても、納入の義務は残る。リスクの位置が違うだけで、リスクそのものが消えるわけではない。&lt;/p>
&lt;p>とすれば、問いはこうなる。いまこの供給網で、行き場のない在庫を最初に抱えるのは誰か。&lt;/p>
&lt;p>＊&lt;/p>
&lt;p>三つの手がかりが、同じ場所を指している。&lt;/p>
&lt;p>TSMCの経営陣は同じ説明会で、成熟した製造プロセスのうち逼迫しているのはAI関連だけだと述べた。データセンターが大量に必要とする電源管理IC、そしてセンサー。これらは0.18マイクロメートルや90ナノメートルといった古い世代の技術で作られる。そして消費者向け製品の需要は強くない、と同社は明言している。&lt;/p>
&lt;p>推論の値段にも、同じ非対称がある。単価が9割下がったといっても、下がり方は一様ではない。最上位のモデルの出力は、いまも100万トークンあたり25〜30ドルの水準を保つ。コモディティ化したオープンモデルは0.1〜0.2ドルまで落ちている。この2桁の開きは、今のところ縮まっていない。フロンティアは値段を保ち、コモディティだけが底に張り付く。&lt;/p>
&lt;p>そして東京エレクトロンの2026年3月期の営業利益は、前期比10.4%減だった。半導体製造装置の需要が全面的に強かったわけではない。弱かったのは、汎用サーバー向けとPC向けである。&lt;/p>
&lt;p>三つとも、同じことを言っている。「AI関連」と「それ以外」の境目で、経済が割れている。逼迫しているのはフロンティア側、すなわちHBMや最新GPU、電源管理ICで、値崩れが先に出やすいのはコモディティ側の汎用サーバーと、NANDのような汎用メモリだ。行き場のない在庫が最初に積み上がるとすれば、そちら側だろう。カナリアは、フロンティアではなく、コモディティに置かれている。&lt;/p>
&lt;p>株価は、この選別を一日ではやらない。売られる日には、フロンティアもコモディティも、ベータの順に一緒に落ちる。それは&lt;a href="https://gyokuro.dev/ja/posts/seven-seventeen-beta/">別稿で見たとおり&lt;/a>だ。だが在庫と評価損は、株価と違って、時間をかけて選別する。シスコの22.5億ドルが積み上がるのに要した時間を思い出せばいい。&lt;/p>
&lt;p>＊&lt;/p>
&lt;p>崩れたあとに何が残るかを考えておく。&lt;/p>
&lt;p>ドットコムの時代、電気通信法1996をきっかけに、通信会社は光ファイバー網に巨額を投じた。波長分割多重という技術で一本のファイバーが運べる容量が跳ね上がり、「敷けば使われる」という掛け声のもと、需要をはるかに超える量が敷設された。2001年に破裂すると、通信業界では60社を超える倒産が出て、帯域の価格は暴落した。敷かれたファイバーの大半は、点灯されないまま地中に眠った。業界はこれを「ダークファイバー」と呼んだ。&lt;/p>
&lt;p>だが、ファイバーは消えない。物理として地中に残る。2000年代に入ってブロードバンド、動画配信、そしてクラウドが需要を生むと、その眠っていた容量が、破綻価格で買い取られ、次の時代の土台になった。&lt;/p>
&lt;p>カルロタ・ペレスが技術革命の歴史に見出した型が、これである。導入期に投機の資本がインフラを敷きすぎる。崩壊する。だが敷きすぎたインフラは残り、その上で次の実体経済が展開する。ファイバーがそうだった。&lt;/p>
&lt;p>いま敷かれているデータセンター、送電網、変圧器も、仮にバブルが弾けても物理として残る。&lt;/p>
&lt;p>ただし、AIではこの型が部分的にしか働かない。ファイバーは敷いてしまえば維持費がほとんどかからず、10年でも眠って次の需要を待てた。電力設備や送電網、建屋も、長く生きる資産だ。だがGPUは3年から5年で陳腐化する。眠って待つあいだに、価値そのものが蒸発する。残る物理と、陳腐化する物理がある。&lt;/p>
&lt;p>そしてここでも、境目は同じ場所を走っている。長く残るのは電力・送電・建屋、ツルハシの側だ。速く陳腐化するのはGPU、金を掘る道具のなかでも消耗の速いものである。ダークファイバーが教えるのは「物理は残る」ではない。「どの物理が残り、どの物理が消えるか」だ。&lt;/p>
&lt;p>＊&lt;/p>
&lt;p>支出は実在する。物理も、その一部は残る。&lt;/p>
&lt;p>需要は、ジェヴォンズの言うとおり増え続けるのかもしれない。だが需要が増えることと、その需要が回収可能な価格で満たされることは、別の話だ。どの支出が回収され、どの設備が次の時代まで生き延びるかを、いまの値段はまだ織り込んでいない。「AI関連」という一語は、回収される側と評価損に化ける側を、同じ籠に入れたままだ。両者を見分ける場所は、需要の華やかさ、GPUの出荷や受注残の大きさにはない。それは、最初に軋む末端、コモディティのカナリアにある。&lt;/p>
&lt;p>25年前、シスコの受注は本物だった。TSMCの支出も本物だ。問題は、そのどちらも、本物であることが回収を約束しなかった、という一点にある。&lt;/p>
&lt;hr>
&lt;p>&lt;em>本稿は投資助言ではない。&lt;/em>&lt;/p></description></item></channel></rss>