シュリンクフレーション国家:6Pチーズと消費税が映す日本の構造 NEW

スーパーの棚に雪印メグミルクの「6Pチーズ」がある。丸い箱を開けると、銀紙に包まれた扇形のプロセスチーズが6切れ入っている。日本では1954年から売られている国民的なロングセラーだ。子供のおやつ、弁当の隙間、晩酌のつまみ。日本人なら誰でも知っている。 1954年の発売時、6Pチーズは170g、1個の厚みは19mmだった。2026年の今、102g、厚み11mm。パッケージの直径は変わらない。中身だけが70年かけて4割減った。 日本経済もそうだ。パッケージは立派になり続けている。名目GDPは膨らみ、税収は過去最高、予算は122兆円。だが中身(実質賃金、可処分所得、消費者が手にする財の量)は縮み続けている。エネルギー・金利・原材料の三重苦が日本経済を圧迫しているデータは三重苦の計算にまとめた。本稿ではその先にある構造的な問題を書く。 「なつかしい厚み」が売れる国 日本語では shrinkflation を「ステルス値上げ」と呼ぶ。価格を据え置いたまま中身を減らす。数十年にわたって静かに進行してきた。 6Pチーズの変化は一夜で起きたわけではない。1997年に150g、2008年に120g、2014年に108g、2022年に102g。段階的に、静かに、厚みだけを19mmから11mmに削った。グラム単価は18年で2倍以上になった。消費者物価指数(CPI)には十分に反映されないが、財布の実感としては確実に効く。 雪印メグミルクは2025年、創業100周年を記念して「復刻版なつかしい厚みの6Pチーズ」を期間限定で発売した。170g、厚み19mm。昔の大きさだ。メーカー自らが70年分のステルス値上げの歴史を認め、「昔はこんなに大きかったのです」と売りにした。復刻版の価格は現行品の約2.5倍。 「なつかしい厚み」。この4文字が売れる国だということを考えてほしい。消費者はチーズの厚みに郷愁を感じている。だがその郷愁の正体はチーズではない。実質賃金が毎年上がり、中身が増え、来年はもっと良くなると信じられた時代への郷愁だ。メーカーも消費者もそれを知っている。知っているから復刻版が売れ、知っているから期間限定で終わる。170gの日本はもう戻ってこない。消費者はそれも知っている。 このペースでいけば、そのうち向こう側が透けて見えるチーズができあがる。 6Pチーズだけではない。ポテトチップスの袋は同じ大きさで中の枚数が減る。牛乳パックは1リットルから900ミリリットルになる。チョコレートの1粒が一回り小さくなる。 さらに巧妙な手口もある。明治のヨーグルトドリンク「R-1」「LG21」は2023年、ラベルの数字を「112」のまま変えずに中身を約5%減らした。どうやったか。単位を「ml」から「g」に変えたのだ。ヨーグルトは水より重い。112gは112mlより体積が小さい。消費者が棚で見るのは「112」という数字だけだ。その横の2文字が「ml」から「g」に変わったことに気づく人はほとんどいない。明治自身がプレスリリースで「体積表記から質量表記へ変更」と書いている。ステルスのなかのステルスだ。 チーズの厚みを削り、ヨーグルトの単位をすり替え、ポテトチップスの枚数を減らす。大手食品メーカーがそこまでしなければ利益を守れない国で、国民の所得が増えている、景気は回復基調にある、と本気で信じている人がどれだけいるだろうか。 縮小均衡の螺旋 食品メーカーにとっては原材料高を吸収する合理的な対応だ。だが消費者にとっては「値段は変わらないのに満足度が下がる」体験の蓄積になる。 この体験が繰り返されるとどうなるか。消費者は防衛に入る。先行きが見えないから貯蓄を増やす。雇用が不安だから支出を絞る。値段が同じでも中身が減っていると知っているから、買う量を減らすか、より安い代替品に流れる。企業は売上数量が減り、さらにコストを削るために内容量を減らす。消費者はさらに財布の紐を締める。縮小均衡の螺旋だ。 日銀は賃金と物価の好循環を待つと言う。だがスーパーの棚を見ればわかる。消費者は好循環を待っていない。生き延びるために支出を切り詰めている。ステルス値上げは企業の生存戦略だが、消費者の生存戦略は「買わない」だ。その「買わない」が集積したものが、日本の消費の停滞である。 そしてチーズを手に取る人の数そのものが減っている。2024年の日本国籍者は前年比90万8574人減。16年連続の減少であり、過去最大の落ち込みだ。出生数は68万7689人と初めて70万人を割った。生産年齢人口(15-64歳)は7370万人に縮小した。消費者の行動が変わらなくても、消費者の頭数が毎年90万人ずつ減る国で、消費の総量が伸びる計算は成り立たない。6Pチーズは薄くなり、食べる人は減り、残った人は買い控える。三重の縮小だ。 財務省が守る聖域 高市政権は三重苦に対して供給側で動いている。備蓄放出は他国に先駆け、非ホルムズ原油の調達は5月には輸入量の半分以上を代替する見通しを確保した。米国との560億ドルのエネルギー取引も締結した。 すべて供給側の対策だ。だが三重苦は需要側で消費者を殺している。需要側を直接支える手段はある。消費税の減税だ。10%を5%に戻せば、すべての消費行動に対して即座に、自動的に、恒久的な価格引き下げが効く。行政コストはゼロに近い。期限切れもない。 だが財務省はこの10%を聖域として守ってきた。あらゆる危機で、政府の対応は減税ではなく補助金に誘導される。補助金は一時的で裁量的で、財務省が蛇口を握ったまま対応できる道具だ。減税は構造的に歳入を削る。蛇口そのものがなくなる。だから使わない。 金がないわけではない。2026年度の税収は83.7兆円。7年連続の過去最高だ。歳出も122.3兆円と過去最大。うち31.3兆円が国債費で、利払いだけで13兆円。記録的な税収を集めておきながら、なお29.6兆円を新たに借りる。消費税の1%は約2.8兆円の税収に相当する。5%への引き下げなら約14兆円。利払い13兆円とほぼ同額だ。やれない数字ではない。やらないだけだ。6Pチーズの中身は70年で4割減ったが、消費税率は上がることはあっても下がったことは一度もない。 財務省にとって消費税率の維持は組織の存続に等しい。広く薄く、景気に左右されにくく、捕捉率がほぼ100%の税源。これを手放せば、毎年の予算編成で各省庁に対して持つ交渉力が構造的に弱まる。国の成長より省の権限を優先する計算だ。 だがこの計算には穴がある。税率を守ることで税収の源泉を壊しているからだ。83.7兆円の記録的税収は名目GDPがインフレで膨らんでいるから成り立つ。三重苦が実質需要を殺し、名目GDPの成長が止まれば、税率をいくら守っても税収は頭打ちになる。 他のG7諸国はどうか。米国は2008年に税還付を数週間で立法し、COVID時には1人1,200ドルの小切手を1ヶ月で配った。英国は2008年にVAT(付加価値税)を17.5%から15%に引き下げた。ドイツは2022年にガスのVATを19%から7%にした。過去3回の危機のうち少なくとも1回で消費税・VAT減税に踏み切らなかったG7の国は日本だけだ。3回とも動かなかった。 なぜ日本だけが動けないのか。財務省の構造にある。主税局が税制を設計し、主計局が各省庁の予算の上限を査定する。歳入と歳出の両方を一つの省が握っている。この構造はG7で日本だけだ。逆らう政治家に対して予算の査定で報復できる。減税を唱えた議員の選挙区に配分される公共事業費がどうなるか。財政学者や政治部記者の間では広く指摘されている力学だ。 安倍晋三は消費税を政治的に動かせた数少ない首相だった。それでも8%から10%への引き上げを2度延期するのが精一杯で、引き下げには手をつけられなかった。高市は安倍の後継を自認し、「積極財政」を掲げ、財務省との距離を売りにしてきた。エネルギー危機という追い風まである。 それでも消費税には触れていない。ガソリンの暫定税率は廃止した。所得税の103万円の壁は動かした。だが消費税の税率は1ミリも動かないまま、4月を迎えた。安倍でも切り崩せなかった城壁を、高市が破れなければ、誰が破るのか。恐らく誰も破らない。財務省は国が縮んでも自分の城は守る。 チャーチルには理論があった 1925年、英国のチャーチル蔵相は戦前の為替レートでポンドを金本位制に復帰させた。英国の輸出は競争力を失い、実質賃金は下がった。ケインズは『チャーチル氏の経済的帰結』で批判した。制度の威信のために実体経済を犠牲にしている、と。結果は1926年のゼネストと10年の停滞だった。 2026年の日本では、日銀が正常化の威信のために利上げを続け、財務省が消費税の威信のために減税を拒む。原油の94%超を中東に依存し、その輸送路が閉ざされているなかで、中央銀行は金利を上げ、財務当局は記録的な税収を集めながら1円も消費者に返さない。 違いは、チャーチルには少なくとも理論があった。間違っていたが、目的はあった。日本の利上げと消費税維持には、実体経済を改善する理論がない。あるのは制度の慣性だけだ。日銀は正常化するから正常化する。財務省は税率を守るから税率を守る。 シュリンクフレーション国家 ホルムズが開けばエネルギーの算術は変わる。だが霞が関の算術は変わらない。次の危機でも同じ絆創膏が貼られ、同じ財源で同じ国債が刷られ、消費税は同じ10%のまま残る。三重苦は一時的だ。だが消費税を動かせない国の構造は恒久的だ。 制度が消費者に「使うな」と言い続けている。消費者は素直にそれに従っているだけだ。 6Pチーズは70年で170gから102gになった。パッケージの直径は変わらない。日本経済も同じだ。名目GDPは膨らみ、税収は83.7兆円の過去最高を更新し、予算は122兆円に達した。だが中身(実質賃金、可処分所得、消費者が手にする財の量)は縮み続けている。 パッケージだけが立派なシュリンクフレーション国家。それが2026年の日本だ。2016年もそうだった。2006年もそうだった。変わったのはチーズの厚みだけだ。この構造が続く限り、日本の消費関連株のバリュエーションには恒久的なディスカウントが正当化される。 6Pチーズが再び厚くなる日が来たら、日本経済が本当に変わったと信じていい。 — 玉露 本稿は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断は読者自身の責任で行われたい。

2026年4月14日 · 1 分 · 玉露 (Gyokuro)

三重苦の計算:ホルムズが閉じた日本で消費は伸びるか NEW

エネルギーが高い。金利も上がる。原材料も上がる。この三つが同時に進行するなかで、個人消費が伸びる経路があるのか。ない。消費が伸びないなら何が日本の成長を支えるのか。それもない。 筆者はこれまで日本株に強気だった。賃金上昇、デフレ脱却、企業統治改革。その見立て自体を全面的に撤回するわけではない。だが「新しい日本」の物語が国内消費にまで及ぶという期待には、データが明確にNoと言っている。消費税と財務省の構造的問題については別稿で書いた。本稿ではマクロデータと企業業績への波及を追う。 エネルギーコストの現在地 4月1日、政府の電気・ガス代補助金が終了した。2022年から断続的に続いた補助は、累計で13.4兆円に達していた。その緩衝材がなくなる。 電力各社は液化天然ガス(LNG)調達コストの上昇分を小売料金に転嫁する。世帯あたりの電気代は月額1万5000円程度の上昇が見込まれている。ガソリンは政府がリッター170円に上限を設けたが、補助の原資は国債だ。政府債務はGDP比235%。財政で消費者を守る余力は限界に近い。 背景はホルムズ海峡の事実上の閉鎖だ。4月8日に停戦が合意されたが、翌9日時点でイランは依然として通航を制限している。日本の原油輸入の94.2%は中東から、うち73.7%がホルムズ海峡を経由する。ロシアからの調達を減らした結果、中東依存度はむしろ96%まで上昇していた。 高市首相は3月16日に戦略石油備蓄から8000万バレルを放出。備蓄は254日分から約230日分に減り、5月にも追加放出を検討している。補助は切れ、備蓄は減り、海峡は開かない。 金利が上がる 日銀は3月の金融政策決定会合で政策金利を0.75%に据え置いた。1995年以来の高水準だ。植田総裁は4月の利上げの可能性を排除しなかった。元日銀チーフエコノミストの関根敏隆氏も4月利上げを支持している。次の決定会合は4月27-28日。 日銀のロジック:原油高が消費者物価指数(CPI)を押し上げ、春闘の名目賃上げ率は連合第1次集計で5.26%、実質金利はなお大幅にマイナス、正常化の継続は正しい。 だがこのロジックには穴がある。原油高によるCPIの上昇は需要拡大ではなくコストプッシュだ。日銀は「賃金から物価への二次的効果がある以上、利上げは正当化される」と主張する。確かに賃金は上がっている。だがその5.26%の名目賃上げがCPI3%超と電気代の跳ね上がりに食われ、実質購買力が改善しない限り、二次的効果の議論は的を外している。供給ショックに利上げで対応すれば需要をさらに冷やす。2000年のゼロ金利解除、2006-07年の利上げ局面と構図は同じだ。しかも今回は供給ショックの原因が外生的で、悪化している。 原材料が足りない ホルムズ海峡は世界の尿素輸出の約30%、アンモニア輸出の20-30%が通過する。日本の石油化学産業の急所はナフサだ。アジアのナフサの60-70%がホルムズを経由し、日本と韓国の石化メーカーは数週間分の在庫しか持たない。複数の石化企業が減産を発表した。 日経によれば、燃料油やディーゼルの調達難は工場だけでなく銭湯にまで広がっている。日産とトヨタが減産に入った。製油所の稼働率は設計能力の67.7%まで落ちた。 4月13日にはTOTOがユニットバスとシステムバスの新規受注を停止した。天井や壁に使われるフィルム接着剤、コーティング剤に含まれる有機溶剤が不足しているためだ。有機溶剤の原料はナフサである。再開時期は未定。タカラスタンダード、リクシルも供給への懸念を表明し、TOTO株は一時8.8%下落した。風呂の接着剤が足りないから浴槽が売れない。サプライチェーンはそこまで具体的に壊れている。 実質賃金の計算 2025年の実質賃金は前年比マイナス1.3%。4年連続のマイナスだ。2026年1月にようやくプラスに転じたが、第一生命経済研究所の新家義貴氏は、原油が100ドルを超える水準で長期化すれば2026年度の実質賃金は再びマイナスに転落すると指摘していた。ブレント原油はすでに104ドル台をつけた。 春闘の名目賃上げ率は5%台。だがCPIが3%を超え、電気代が10-30%上がり、ナフサ由来の消費財価格が上昇するなかでは、実質可処分所得はフラットからマイナスだ。消費はGDPの約55%を占める。その消費が伸びないなら、輸出か設備投資で支えるしかないが、輸出は製造業のマージン圧縮、設備投資は日銀自身が認めるように人手不足と資材コスト上昇が足かせになっている。 G7で最も深い傷 三重苦はグローバルな現象だ。だが痛みの分配は均等ではない。ゴールドマン・サックスは原油110ドル前提で米GDP成長率見通しを0.3ポイント引き下げ、2.2%とした。年間6500億ドル規模のAI設備投資がGDP比2%の成長下支えとして機能する。FRBは少なくとも利上げはしていない。欧州はLNG供給途絶に苦しむが、2022年のロシア危機後にガス供給を分散させた経験がある。 日本だけが三つの条件を同時に満たしている。エネルギー輸入の集中度が先進国で最高、中央銀行が利上げ方向にあるのは日銀だけ、財政余力がGDP比235%の債務で最も乏しい。英エネルギー分析機関ゼロカーボン・アナリティクスのエネルギー供給途絶リスクスコアは日本が主要国中最高の6.4。韓国5.3、インド4.9、中国4.4。G7のなかで脆弱性が突出している。 企業業績の下方修正はこれからだ 2025年12月時点の市場コンセンサスを振り返る。ジャナス・ヘンダーソンはTOPIX構成企業について二桁の1株当たり利益(EPS)成長を予想。バンク・オブ・アメリカは年末のTOPIX3,700、日経平均55,500。大和はTOPIX3,750。いずれもホルムズ閉鎖を織り込んでいない。 日経平均は2月末の最高値から10%超下落し、テクニカルな調整局面に入った。だがここまでの下落はポジション解消と原油の恐怖が主因であり、アナリスト予想の本格的な切り下げはこれからだ。 ブルームバーグは4月12日、TOPIX500構成企業のうち直近1週間で113件の業績予想が下方修正されたと報じた。下方修正が上方修正を上回ったのは昨年7月以来だ。シティグループの業績修正指数(日本)は3月末に0.16まで低下。数週間前の0.42からの急落である。化学・素材セクターでは主要企業の約4割が業績見通しを下方修正した。 だがこれはまだ序章だ。化学・素材・運輸・自動車はエネルギーコストの直撃を受けて修正が始まったが、次の波は小売・外食・不動産だ。光熱費上昇がサービス業のマージンを圧迫する効果、円安の輸入コスト押し上げ、消費の三重苦から来る需要減退。これらは4月下旬から5月のガイダンスシーズンで初めて数字に表れる。 2008年のリーマン・ショック時、日本のGDPは年率12.1%のペースで縮小し、TOPIXは高値から61%下落した。今回は金融危機ではなくエネルギー危機だが、ダラス連銀の試算ではホルムズ閉鎖が3四半期続けば原油は132ドルに達する。その場合、TOPIX構成企業の二桁減益は現実的なシナリオだ。 ガイダンスシーズンに向けて 危機前のコンセンサスが二桁増益。実際に着地しそうなのは横ばいか一桁台前半。海峡が閉じたまま第2四半期に入れば減益もあり得る。市場の10%の調整は、危機前コンセンサスの二桁増益が横ばいに着地すると仮定した場合、想定されるEPS修正幅の3分の1程度しか織り込んでいない(筆者の試算)。残りはガイダンスシーズンで来る。 IMFの2026年成長率見通しは0.8%。エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)は海峡閉鎖が長期化すればGDP3%の縮小もあり得ると指摘した。仮に明日ホルムズが完全に開いたとしても、備蓄の消耗、サプライチェーンの断裂、補助金に投じた財政資金はもう戻らない。 エネルギーコスト、金利、原材料。三つとも上がっている。三つとも、ホルムズ海峡が開かない限り反転しない。日銀が利上げを撤回しても、エネルギーと原材料のコストが消費を圧迫し続ける。日銀が利上げを強行すれば、借入コストがさらに上乗せされる。この計算が変わるまで、日本株の下方修正リスクは続く。 海外投資家は日本の消費関連株に長年弱気だった。正しかった。「新しい日本」の物語のなかで、賃金上昇とインフレがようやく消費セクターにも追い風になるという期待が一部にあった。三重苦はその期待を潰すはずだ。金融株は利上げの恩恵を受けている。半導体装置や防衛は海外需要で回る。だが人口が毎年90万人ずつ減り、実質賃金が4年連続マイナスで、原油輸入の94%をホルムズ海峡に依存し、投入コストが上がり続ける国の消費で業績が決まる株を、ここで強気に転じる理由はどこにもない。 GDPの55%を占める個人消費は、日本株にとって壁のなかのカビのようなものだ。三重苦はカビの繁殖を加速させるかもしれない。だが仮にホルムズが明日開いたとしても、カビが消える見通しはない。壁紙を貼り替えても(補助金)、換気を良くしても(賃上げ)、湿気の原因(財務省、消費税、人口減少)を断たない限り、カビは戻ってくる。それが日本の消費セクターの現実だ。 消費が構造的に伸びない理由は三重苦だけではない。財務省と消費税の構造的問題についてはシュリンクフレーション国家で書いた。 — 玉露 本稿は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断は読者自身の責任で行われたい。

2026年4月14日 · 1 分 · 玉露 (Gyokuro)